AIに質問したのに、欲しい答えと違うものが返ってきた。そんな経験はありませんか。
実は、AIの答えの質は「AIの賢さ」だけでは決まりません。こちらの聞き方、つまり指示文(プロンプト)の書き方で大きく変わります。プロンプトとは、AIに渡すお願いの文章のことです。同じAIに同じ話題を聞いても、頼み方を変えるだけで返事の中身が別物になることは珍しくありません。AIは、こちらの言葉を手がかりにして「何を求められているか」を組み立てながら答えを作るからです。
この記事では、今日から真似できる5つのコツを、悪い例と良い例のペアで紹介します。内容は思いつきではありません。ChatGPTを作るOpenAI、Claudeを作るAnthropic、Geminiを作るGoogleが公開している公式の書き方ガイドを読み比べ、3社に共通する考え方を土台にしました。出典は記事の最後にまとめています。
「短く書く」は「情報を削る」ではない
最初に、この記事のタイトルにある「短く」の意味をそろえておきます。短くするとは、文字数をとにかく減らすことではありません。目的に関係ない飾りや重複を減らして、AIが推測しなければならない空白を小さくすることです。
OpenAIの公式ガイド(Prompt engineering best practices for ChatGPT)は、明確で具体的な指示を書くことと、依頼を理解するために十分な文脈(=背景情報)を渡すことを、セットで案内しています。つまり「必要な情報まで削るほど答えが良くなる」わけではありません。
残すべきものは3つです。
- 目的(何をしてほしいか)
- 相手(誰が使う・読むものか)
- 望む結果(どんな形で返ってきたら成功か)
この3つを残したうえで、あいまいな言い回しや同じ話の繰り返しを削る。それがここでいう「短く正確に」です。Googleの公式資料(Prompt design strategies)も、明確で具体的な指示に文脈を添えることを基本として挙げています。
今日から使える5つのコツ(悪い例と良い例つき)
コツ1: 目的・相手・望む結果を言葉にする
一番多いつまずきが、あいまいな聞き方です。「いい感じにして」「どう思う?」のような聞き方だと、範囲が決まらず、当たり障りのない答えが返ってきやすくなります。
- 悪い例: 「この文章、どう思いますか?」
- 良い例: 「この文章を、誤字と、意味が伝わりにくい箇所の2点だけチェックしてください。読むのは社内の同僚です」
AIには、あなたの状況が画面の向こうから見えているわけではありません。だから「何を」「誰向けに」「どうしてほしいか」を言葉にした分だけ、答えは狙いに近づきます。OpenAIの公式FAQ(How do I create a good prompt for an AI model?)も、タスクをはっきりさせ、必要な文脈と望む文体を伝えることをすすめています。自分でも何が欲しいか決まっていないときは、先に「私は何に困っているのか」を1行で書いてみると、指示文が自然と具体的になります。
コツ2: 聞きたいことは番号で分ける
聞きたいことが2つ以上あるときは、文章の中に混ぜず、番号付きのリストにして分けます。
- 悪い例: 「旅行の予算と持ち物と、あと雨の日はどうすればいいかも教えて」
- 良い例: 「次の3点を教えてください。1. 予算の目安 2. 持ち物リスト 3. 雨の日の代替プラン」
Anthropicの公式資料(Prompting best practices)は、順番どおりに進めてほしいときや、項目の抜けが困るときに、番号付きリストや箇条書きで手順を示すことを案内しています。番号で分けると、答えも番号に対応して返ってきやすくなり、どれかが抜けていればすぐ気づけます。番号にすれば絶対に漏れがなくなる、という保証ではありませんが、抜けを見つける手間は確実に軽くなります。
コツは「1つの番号に1つの論点」です。うまく番号にできないときは、まだ聞きたいことが固まっていないサインかもしれません。また、依頼そのものが複雑すぎるなら、1回の指示に詰め込まず、小さな依頼に分けて順番に頼む方法もOpenAIとGoogleの両方の資料で案内されています。
コツ3: 「しないで」には「代わりにこうして」を添える
「やらないでほしいこと」の指定も大切です。人間どうしなら空気で伝わることも、AIには言葉にしないと伝わりません。ただし、禁止だけを並べるのは実はもったいない書き方です。
- 悪い例: 「子ども向けにお金の話を説明して。難しくしないで」
- 良い例: 「子ども向けにお金の話を説明してください。専門用語は使わず、代わりにお菓子の買い物のような日常のたとえで言い換えてください。投資をすすめる話は入れないでください」
OpenAIのAPI向け公式資料(Best practices for prompt engineering with the OpenAI API)には、「何をしないか」だけでなく「代わりに何をするか」を書く例が載っています。禁止だけだと、行き先のない空白が残ります。「〜しないで。代わりに〜して」とセットにすると、答えの方向まで決まります。
禁止事項は、安全に関わること・触れてほしくない話題・公開してはいけない範囲のような、本当に必要な境界に絞りましょう。数を増やすことより、境界と代替行動をセットにすることが効きます。
コツ4: 言葉でずれる部分は、実物に近い見本で示す
「カジュアル」「ていねい」といった言葉は、人によって思い浮かべるものが違います。言葉で説明しにくい雰囲気や形は、見本を見せるのが早い方法です。
- 悪い例: 「カジュアルだけど失礼じゃない感じのメールにして」
- 良い例: 「次の例のような文体でメールを書いてください。例: 『お世話になっております。先日の件、ありがとうございました!』」
見本を選ぶときのポイントは2つです。第一に、実際の用途に近いものを選ぶこと。第二に、見本を複数見せるなら、形式をそろえること。バラバラな形の見本を並べると、どれに合わせればいいかがぼやけます。
では、見本はいくつ付ければいいのでしょうか。ここは各社で案内が分かれます。Anthropicは現在のClaude向けの資料で3〜5例を目安に挙げています(2026-07-25時点の公式案内で確認してください)。一方Googleは、最適な数は試して調整するものとし、例が多すぎるとAIが例の形に引きずられすぎる(過度な適合)可能性にも触れています。つまり「必ず1個」「多いほど良い」という固定の正解はありません。まず少ない数で試し、結果を見て足し引きするのが、公式資料に共通する姿勢です。
コツ5: 長さ・形式・完成条件を先に決める
答えの「器」を先に決めておくと、返ってきたものがそのまま使えます。
- 悪い例: 「会議の内容をまとめて」
- 良い例: 「会議の内容を、決まったこと・宿題・次回の日程の3見出しで、全体300字以内でまとめてください」
「短く」ではなく「300字以内」、「見やすく」ではなく「3見出しの箇条書き」。使う場面から逆算して、数字と形で指定するのがポイントです。OpenAIのAPI向け資料も、望む結果・長さ・形式・文体を具体的に示すことを案内しています。
もう一歩進めるなら、「完成条件」まで書きます。完成条件とは、できたかどうかを自分で確認できる条件のことです(例: 「300字以内である」「3つの見出しが全部ある」)。Anthropicの公式資料(Prompt engineering overview)は、プロンプトを改善する前提として、成功の条件を先に決め、それを確かめる方法を持つことを挙げています。ゴールが測れる形になっていれば、答えがずれたときも「どこがずれたか」を指させます。
そのまま使える指示文の型(早見表)
5つのコツは、次の5つの欄として1枚にまとめられます。指示文を書くとき、この表を上から埋めるだけで型になります。
| 欄 | 書くこと | 記入例 |
|---|---|---|
| 1. 目的と相手 | 何をしてほしいか。誰が使うか | 「小学生向けの遠足の案内文を書いて」 |
| 2. 論点 | 聞きたいことを番号で分ける | 「1. 予算 2. 持ち物 3. 雨の日の案」 |
| 3. 境界と代替 | しないでほしいこと+代わりの行動 | 「専門用語は使わず、日常のたとえで言い換えて」 |
| 4. 見本 | 文体や形の、実物に近い例 | 「例: お世話になっております。先日の件、〜」 |
| 5. 器と完成条件 | 長さ・形式・確認できる条件 | 「300字以内・3見出し・箇条書きで」 |
毎回すべての欄を埋める必要はありません。単純な質問なら、目的と器だけで足りることもあります。誤解されやすい文体の仕事には見本を足す、工程が多い仕事には番号を使う、というように、答えを変える欄だけを選んで書くのが実用的な使い方です。
1回で決まらなかったときの直し方
5つのコツを使っても、1回目から狙いどおりの答えが出るとは限りません。それで大丈夫です。OpenAIの公式ガイドも、最初の回答を見て、表現を明確にしたり、文脈を足したり、依頼を単純にしたりしながら繰り返し直していく方法を案内しています。直すときの手順は次のとおりです。
- 答えの「どこが」外れたかを、1つだけ特定する(長さか、形式か、内容か)
- 原因に合わせて、指示文を1か所だけ直す。前提が足りなければ文脈を足す。形がずれたなら見本か器の指定を足す。話が浅く広くなったなら、依頼を小さく分ける
- 直した指示で、もう一度頼む
全部を書き直さないのがコツです。1か所ずつ直すと、何が効いたのかが分かり、次から最初の1回で書けるようになります。
あわせて、2つの注意も添えておきます。第一に、指示文を磨けば答えの正しさが保証される、というわけではありません。Anthropicの資料も、すべての問題がプロンプトの改善だけで解決するわけではないと説明しています。日付や金額のような大事な事実は、答えを受け取ったあとに元の情報で確かめてください。第二に、見本や文脈として、個人情報や仕事の秘密をそのまま貼るのは避けましょう。入力してよい情報の範囲は、使っているサービスの規約や、勤め先のルールで確認してください。
よくある質問
指示文は短いほど良いですか?
短さそのものは目的ではありません。目的・相手・望む結果という必要な情報は残し、あいまいな飾りや重複を減らすのが正しい「短さ」です。依頼が複雑なら、長い1本にせず、焦点を絞った小さな依頼に分けることをOpenAIの公式資料はすすめています。
5つのコツは毎回すべて使う必要がありますか?
ありません。単純な質問なら、目的と形式だけで足りることもあります。誤解されやすい文体には見本を、順番が大事な作業には番号を、というように、結果を変える要素だけを選んで足してください。
「してほしくないこと」は書かないほうが良いのですか?
安全や範囲を守るための禁止は必要です。ただし禁止だけで終えると、答えの行き先が空白になります。「何をしないか」に「代わりに何をするか」を添える書き方を、OpenAIの公式資料は例つきで示しています。
見本はいくつ付ければよいですか?
すべてのAIに共通する固定の正解はありません。Anthropicは現在のClaude向けに3〜5例を案内し、Googleは数を試しながら調整し、多すぎる例への引きずられに注意するよう説明しています。まず少ない数で試し、結果を見て増やすのが現実的です。目安の数字は変わることがあるので、2026-07-25時点の公式案内で確認してください。
まとめ
5つのコツに共通するのは、「AIに推測させる部分を減らす」という1つの考え方です。こちらが決めて渡せる情報が増えるほど、答えは狙いに近づきます。そして指示文は、書くほど上達します。次にAIへお願いするとき、この3つから始めてみてください。
- まず「何を・誰向けに・どんな形で」の3点だけを、いつもの質問に書き足してみる
- 聞きたいことが2つ以上あったら、送る前に番号付きのリストへ書き直す
- 答えがずれたら、最初から書き直さず、外れた1か所だけ直して続けて頼む
公式一次情報
確認日: 2026-07-25
- Prompt engineering best practices for ChatGPT: 明確で具体的な指示と十分な文脈を渡し、回答を見ながら繰り返し直す方法を案内するOpenAIの公式ガイド
- How do I create a good prompt for an AI model?: タスクの明確化、文脈と文体の指定、複雑な依頼の分割と会話での改善を案内するOpenAIの公式FAQ
- Best practices for prompt engineering with the OpenAI API: 望む結果・長さ・形式の具体化、出力例の提示、禁止に代替行動を添える書き方を示すOpenAIの公式資料
- Prompt engineering overview: 成功条件と実測方法を先に決めるという、プロンプト改善の前提を説明するAnthropicの公式資料
- Prompting best practices: 番号付き手順の使いどころや、例の質と数の目安など、Claude向けの具体的な書き方を示すAnthropicの公式資料
- Prompt design strategies: 例の数の調整や過度な適合への注意、複雑な依頼の分割方法を説明するGoogleの公式資料